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『考えない練習』・読書日記
考えない練習
 年をとるにつれて、月日があっという間に過ぎていく。年末や誕生日に1年を振り返り、自分はこの1年一体何をしたかを考えると、ほとんど記憶が無く、自分自身も何も変わっていないことに気付いて愕然とする。誰もがそんな経験をしているだろう。

 このことについて、今まで僕自身の解釈はこうだった。
 9歳の子供が10歳になる時には、1年間で過去の記憶総量、つまり自我意識の1/10が増える。これはかなり大きな変化と言える。それに比べて、39歳から40歳になる時は1年間で1/40しか増えない。だから、1年間に経験した量が一緒なのに、1年を相対的に短く感じ、自分が変わった気もあまりしないのは仕方が無い。

 ところが、この本で全く違う解釈を教えられた。そして、恐らくこちらの方が正しい。それはこういうことだ。
 幼い頃は、五感から入ってくるフレッシュな情報を直接受け取れている。ところが、徐々にその情報に対して慣れ、飽きが生じてきて、「思考」という現実そのものには直結しない妄想に耽ってしまう。例えば人の話を聞いているようでいて、実際は心の中で「あー、またいつもの話が始まったよ、この人は何でこうなんだろう?今日は特に機嫌が悪いぞ、寝不足なのかな?」などと別のことを考えている。これをすると、1秒間人の話を聴いているようでいても、実際に五感を使って聴いているのは0.1秒しかなく、残り0.9秒は「思考のノイズ」に脳のエネルギーを奪われてしまい、「聴いた」という身体的実感が消えている。これを続けていると、1年365日の内、五感からの情報を直接入力して「生」を実感できているのはわずか36.5日。つまり、1年間の経験の絶対量自体が少なくなっているために、年をとると1年を短く感じるのである。
 もっと究極の例を挙げてみよう。
 初めての相手とセックスをする時。真剣に恋しているのであれば、その人の表情、声、匂い、味、肌触り全て漏らさず観察しようとしているから、その時の記憶は、何年経っても身体的実感として鮮烈に残っている。それに対して、自分の妄想に耽ってマスターベーションをする時。それはあくまでも自分の脳内の経験に過ぎず、五感の記憶はほとんど残らない。1年に100回マスターベーションをしようが、振り返ってみて何の記憶も残っていない。
 しかし、その恋人とのセックスすら、回数を重ねるに連れて慣れや飽きが生じていく。そして、常に新しい刺激を求めて、新しいパートナーを求めたくなる。こういう心の衝動エネルギーを仏教では「迷い(三毒の一つ、癡(ち)=無明)」というらしい。これに対して、強い刺激を求めることなく、五感を研ぎ澄ます練習をしていくことで、いつもの日常を繊細な味わいをもって楽しめるようになることを目指すのが、仏道の方向性のようだ。

①一日に十回以上メールボックスを開き、SPAMメールばかりで親しい人からのメールが来てないとがっくりと落ち込む。
②自分のブログのアクセスカウンターを見て、その日のアクセス数に一喜一憂し、コメントが来てようものなら、大喜び。
③朝、仕事を始める前の癒しにと、YouTubeの好きな音楽をヘッドホンで聴いてしまうと、その日一日余計仕事に身が入らず、かえって疲れる。
 僕自身の日常で体験しているこれらのこと。こんな一見取るに足りないようなことに関しても、仏教的な視点から見るとどうなのか、この本では丁寧に解説してくれている。読んでいて、アクセスカウンターやアクセス解析などつけていても、結局自分の心が疲れ、自我を肥大させるだけだと気づいたので、今日から外すことにした。

 著者の小池龍之介さんは東大卒のお坊さんだが、まだ31歳。ネット上でも、『家出空間』なる不思議なサイトを開いている。感覚が若くて同時代を生きている人だから、今まさに自分が悩んでいる問題に直接答えてもらえる感じがうれしい。「もっと五感を使って、思考を止めよう」という主張は、クリシュナムルティやヴィパッサナー瞑想と基本的には同じだと思うが、一般の若い人が読むにはこの本が一番わかりやすくて良いだろう。巻末の脳科学者池谷裕二さん(以前書評済み)との対談もなかなか興味深い内容に満ちている。発刊してまだ間もない本だが、ベストセラーになりつつあるというのもうなずける。
 衝動で行動する自分を何とかしたい人、自己否定感に悩む人、仏教の考え方の基本に興味がある人、そんな僕のような人はこれを読んだらいいのではないかと思う。


Comment

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ご無沙汰しています。
体調は大丈夫でしたか?
今年は寒暖の差が激しく,ミツバツツジにツララという特異なコンビネーションが見られます。島ではどうでしょうか。

GWの件,ありがとうございます。
3日OKです。よろしくお願いします。

今年は,黒味川メンガクボ(4/29-5/1)と荒川口~縄文杉~宮之浦~淀川口~鯛之川渡し~尾之間のトレラン(5/4)の予定です。

お会いできる日を,今から楽しみにしています。
よろしくお願い致します。
インヤン | URL | 2010/04/11/Sun 21:52 [EDIT]

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