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小楊子川右俣下部~本流上部・屋久島沢下り記録
小楊子本流・こけしスラブ
 5月14、15日、先週末に引き続いて捜索活動のため、小楊子川に行ってきた。同行は山岳ガイドのSさん。
 行方不明の後輩(山は初心者、単独)が道に迷った末に沢筋を下り、大雨後の鉄砲水に流され途中の岩にひっかかっている事態も想定し、普通の沢登りではなく、より見つけやすいだろう沢下りにした。
 小楊子川と言えば、屋久島でも宮之浦川と並ぶ二大険谷。僕が北大でフラテ山の会に属していた時の最後の夏合宿、2ヶ月前から入念な準備山行を重ねてやっとこさ行けた川(その時は本流~左俣~宮之浦岳~縄文杉を5泊6日)である。それほど難しい沢を、まともな準備もなしに、しかも登りよりも難易度のあがる下りで行こうというのだ。その上、天気予報は16日から雨マークだから、1日の予備も許されないタイトスケジュールだ。「明後日から1泊2日で小楊子川を探してきてくれ」と突然頼まれた時は、これはマジで自分が遭難するかもしれないと、正直非常に憂鬱で、よっぽど断ろうかと思った。

5月14日
大洞杉小楊子右俣1
 4時半、小瀬田発。小楊子林道終点近くに車を1台デポし、栗生林道のゲートを栗生駐在所で借りてきた鍵で開け、林道暫定的終点(修復工事中)まで車で進む。地上高の高い四駆車でないと進めない。到着実に7時半。まるで東京から山に出かけたみたいに遠かった。そこからは、土砂崩れで崩壊し廃道となっている林道を40分歩き、ようやく栗生歩道に到達。栗生歩道を10分歩き、左写真の大洞杉へ。
 そこから、沢形を北へ10分ほど下っていくと、さして危険なところもなく、8:30、小楊子川右俣(右写真)に到着。沢形(枝沢)の右岸を下った結果、右俣の上流側に降り立つことになったのだが、いよいよ入渓して右俣を下っていこうと思いきや、いきなりどうにも越えられない巨岩と滝。これを安全に越えるために、たった今降りてきたばかりの枝沢を再び登り返して、20メートルの高さで高巻く羽目に。入渓早々いきなり苦労させられてしまい、これでは、先が思いやられる・・・。

小楊子右俣2小楊子右俣3
 右俣は、こんな感じ。やはり、巨岩が多く、ところどころ、どうしても泳がないといけない場所が出てくる。先週の淀川ほどではないが、かなり水は冷たく、不快。また、50mほどの高さの左岸急斜面を高巻くところがあり、ザイルこそ出さなかったが、一部恐いところもあった。

小楊子二又
 10:20、左俣との出合到着。予想より、速いペースで来られた。しかし、ここからはいよいよ本流の下降。水量は今までの2.5倍ほどになり、谷のスケールもさらにでかくなる。いやがおうにも高まる緊迫感。

小楊子本流1小楊子本流2
 左写真は、高巻き中に見下ろした、美しい沢の色。今回は捜索活動のために河原を歩きたく、高巻きはなるべくしたくなかったのだが、相手は険谷小楊子川。どうしたって、巻かざるを得ないところが沢山出てくる。全体を通して、三分の一は高巻きをしていた印象がある。
 右写真の如く、右俣以上に大きな巨岩がゴロゴロと行く手を阻み続ける。そして、冷たい淵の泳ぎ・・・。

小楊子本流3小楊子本流4
 とにかく、でかい岩、岩、岩!まるで自分たちが小人になってしまったかのよう。また、強い水流に押し流されて、滝の下に落ちていくなんてことがないように、要所要所でザイル確保やザック運搬が必要・・・

小楊子本流・こけしスラブ小楊子本流9
 そして12:50、最大の核心「こけしスラブ」に到着。左写真は、通過後に下流から見返した「こけしスラブ」。高さ100m近く。まるでこけしのような形をしているからその名が付けられた。こけしスラブの基部には、右写真のような15~20mほどの巨大なチョックストーンがあり、左右から滝が流れ落ちている。チョックストーンの中央左寄りに、一条の割れ目がある。
小楊子本流7小楊子本流8
 降りた後に下からこの割れ目を見上げると、このように1~2mサイズの巨石が10個くらい隙間に挟まっている。下から登る時はこの隙間を右写真のようにチムニー登りで登ればよいと思う。上部4mほどは推定難易度Ⅲ級、トップは確保無しの登りになるので、もし落ちたときに大怪我しないように地面にザックを並べるなどの注意が必要。12年前に夏合宿で行ったときは、巨石が動くのではないかと不安でこのルートを取らず、チョックストーンの右岸寄りのフェースに連打してあったボルトにアブミをかけて、フリークライミングが得意な後輩に突破してもらった(Ⅴ級)。しかし、今回再訪してこの巨石の苔むし方を見ると、巨石に足をかけながら割れ目を登ってまず大丈夫だと思った。実際Sさんは、4年前に来た時割れ目を登って突破したらしい。
小楊子本流5小楊子本流6
 で、これは通過前に上から見下ろした写真だが、肝腎の今回の下り方の説明である。割れ目をクライムダウンしていくのは危険に思えたので、岩の隙間に捨てテープをセットしてアップザイレンで下った。二人で所要40分。ちなみに左写真中央の舞台のような平らな岩は、小さく見えるが直径10m超(この谷のスケールのでかさ!)。12年前この上で快適なテント1泊目を過ごした懐かしの岩である。

小楊子本流10小楊子本流11
 左は有名な桃太郎岩。真ん中で桃のように真っ二つに割れているからこの名前。右はなんとなくモアイ像っぽい岩。

小楊子本流テン場
 15:15、標高520m辺りで左岸を小さく巻き始めたところ、素晴らしいテン場発見(水面からの高さ数メートルの段丘状)。近くには過去に誰かが泊まった跡のある見事な岩屋もある。この先のゴルジュに突入すると次のテン場はもう見つかりそうになかったので、少し時間は早かったがここに泊まることにした。


5月15日
 昨夜は19時過ぎに寝て、今朝は5時過ぎにSさんに起こされる。この3週間ほどずっと寝不足が続いていたため、実に久しぶりに10時間の爆睡。起こされなかったら、まだ2時間位寝ていただろう。
小楊子本流12小楊子本流13
 6:40、沢下り再開。相変わらず、2世帯住宅サイズの巨岩がうず高く積まれた中を蟻のようにちょこちょこと進んでいく。
小楊子本流14小楊子本流15
 今日もゴルジュの左岸巻きが多い。大きい巻きはほとんど左岸を行くのが今回の沢の特徴か。巻きながらも、遭難者の手がかりが何かないか、樹間から沢を覗き込みながら進む。右岸は発達したスラブの威圧的な壁。
小楊子本流16小楊子林道終点
 沢の中洲に杉が生えてある地点に着くとゴールは近い。標高300m辺りで左岸に上がり、斜面の安全そうな所を選んで右上方に登っていく。ヤブ漕ぎもほとんどなく20分ほどの登りで林道終点にドンピシャで当てる。8:55だった。荷物の軽量化に努めたこと、下りだったこと、息の合ったベテラン2人だったこと、2人とも小楊子が2回目だったこと、水量が少なかったことなど好条件はいろいろあるが、総所要時間が12年前の6割もかからない、という僕にしては驚くべきハイペースの遡行だった。
 でも結局、遭難者は見つからず。


 小楊子川の難易度は右俣は4級、本流は5級。(もちろん、沢一般に言えることだが、下りは登りよりも難しい。難易度的に0.5級は上がる気がする。例えば滝があっても、下から見れば一目瞭然でも、上から近づく場合はいちいち大岩を越えて落ち口まで行ってみないと、中を降りられるかどうか確認できないから大変である。)全体を通して、技術的にものすごく難しい場所と言うのはないが、ルートの3割ほどが逃げ場のない巨大スラブに囲まれた場所なので、なんとも言えない威圧感に胃が痛くなる。それに押し潰されることなく、沈着冷静に天候判断やルートファインディングを数日間し続けられるだけの精神的、肉体的なスタミナが必要な沢だと思う。最低でも沢を30本は行ったことのある人間が、パーティに二人はいないと危ない。
 最大の核心はやはりこけしスラブの突破。中を行けるか、高巻くかで所要時間や疲労度が大きく異なろう。と言っても、中を登るのがめちゃくちゃ困難という訳ではない。ただ、登りに際して水量があると、そもそもチョックストーンまで泳ぎ着くことができないだろう。
 装備としては、ザイルと、捨て縄を大目に持っていけばよい。ザイルは今回の沢下りでは、沢中のアップザイレンで2回と、渡渉で1回、合計3回使った。高巻きでは上手にルートファインディングができたので、一度もアップザイレンしなかった。今回は比較的水量が少なかったが、水量次第ではもっと頻繁に使う羽目になるだろう。カムやハーケン、ボルトの類もあれば便利だろうが、なくても別に何とかなる(今回僕らは持参せず)。軽量化のためには省いたほうが良いように思う。乾いた花崗岩とヤブ漕ぎがほとんどなので、靴はフェルトよりもアクアステルス系の方が良く効く。
 今回、Sさんという僕以上の力量の持ち主と一緒に行けて本当に良かった。トップこそ主に僕が担当したが、無鉄砲に突っ込みがちな僕の手綱を要所要所で締めてくれたおかげで、無事に帰って来られたと思う。ありがとうございました。



 おまけ:帰りに寄った駐在所裏の栗生海水浴場の風景。のどか。
栗生海水浴場

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| | 2010/05/19/Wed 00:55 [EDIT]

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