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黒味川上部(メンガクボ)・屋久島沢登り記録
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 9月1~2日、先週の続きで黒味川上部(メンガクボ)を登り、淀川左又を下ってきた。3週連続の単独行。
 今日は、その内の黒味川上部の記録。
 
 9月2日。曇、時々晴または小雨。屋久島らしい天気。
 妻に車で黒味林道ゲートまで送ってもらい、そこから20分ほど歩いて、6:45、標高260mの前回終了点から入渓。
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 そこからゴーロを少し歩くと、7:10、ケヅメ入口の滝(1枚目)に到着。いよいよ、ケヅメだ。もちろん巻き。右岸を選ぶ。当初、沢伝いに巻きながら、樹林の隙間からケヅメゴルジュの内部(2枚目)を偵察していた。が、余りの険悪さに見てるだけで胃が痛くなってきそうだったので、途中から尾根筋に逃げた。
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 尾根はかすかな踏み跡が残る感じで歩きやすかった。しかも、523mポコの北北東にあるコルまで行くと、そこにはトロッコ軌道の跡(1枚目)があった。トロッコ道と言うのは、緩やかな下り勾配を利用して材木を運ぶために作ってある(あまりに急な下りだとスピードが出過ぎて危険だし、逆に登り返しがあってもトロッコは進めない)ので、斜面をトラバースしたい時には非常に便利。今回がまさにそれなので、喜んで軌道跡を歩かせてもらう。これは楽チン。
 ところがしばらくすると軌道跡は忽然と藪に消えたので、本流に少しずつ近づく方向に進路を微調整しつつ藪漕ぎ。本流が近くに見えてきた(2枚目)。なかなかのゴルジュっぷり。間もなく進路上に枝沢が現れた。そろそろケヅメも終了かなと、枝沢を下り本流に到着。
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 降りた所は巨大な淵で、その先はカーブしていてよく分からない。試しに流れに飛び込んで、上流へ泳いで行ったが、淵の奥から水の落ちる轟音と飛沫が(1枚目)・・・。これはとんでもない大滝に違いない、下手に滝壺に入ると水流に巻き込まれて溺れてしまうぞ。引き返して、枝沢を登り返し、改めて右岸を巻き直す。巻いている途中、さっきは岩壁に隠れて見えなかった大滝が見えた(2枚目)。いやー、予想以上のスケール、滝壺に近寄らんで良かったよ。
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 数分も巻くと突然、トンネル(出口)が出現。家に帰ってからほかのパーティの記録を読むと、どうやらトロッコ道はこのトンネルまでずっと続いていたらしい。どうしてあんなに分かりやすい道を見失ったのだろう??一体僕のルートファインディング能力って??まあ、でもお陰でごく一部とは言え、ケヅメの内部を体感できたから良しとするか。
 後ろを振り返ると、こんな感じ(2枚目)。写真じゃ全然、あのスケールが伝わらないなあ。
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 よく見ると、トロッコの橋桁まである(1枚目)。こんな山奥にこんなものを作ってしまった昔の人って、大した根性してるなあとびっくり。
 その先は2枚目の滝。で、これを回り込んで先に進むのが難しい。結局トンネル脇の階段状の岩場を登って小さく巻いたが、細い枝を掴んでギリギリの登りで、この日一番嫌らしいクライミングだったかもしれない。
 これにて標高約350~520mまで続いたケヅメゴルジュは終了。9:45だった。黒味川の核心部を巻いたとはいえ無事通過できて、ホッと一安心。
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 その後、沢は落ち着きを取り戻す。
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 と言っても、こんな感じで巨岩や小滝は連続。
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 12時に七五谷出合を通過し、13:25、標高880mのメンガクボ出合に到着。左又であるメンガクボに入る。入るとすぐに目の前にオレンジ色の物体が。出たー、噂のユンボ。数十年前に上で林道工事をしていて、落っこちちゃったらしいです。
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 その上に3段の滝。難しいという記録を読んでいたので、迷わず右岸巻き。間もなく、上方に林道の橋(七五橋)が見えてくるが、ここに辿り着くまでが、巨岩の処理で予想以上に手間取り、橋着は14:25。
 この時点でかなり体力を消耗しており、投了する誘惑に駆られたが、やはり美しいメンガクボで泊まりたかったので、もう少し頑張ることにする。
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 その先も、巨岩、そしてその間に散在する小滝群という、いつもながらの光景。
 しかし、そんな中、この日の後半はずっと不思議な体験をしていた。
 写真のような光景を目の前にして、視線を右から左に移していくと、周辺はぼんやりしているのに、自分が進むべきルートが、そこだけフォーカスが合ったように浮かび上がって見えるのだ。さらに、ちょっと難しそうな滝も、遠くから一瞬見ただけで、「あ、これは行ける」とわかってしまうのだ。いったんそう心に決まったら、滝をしげしげと観察するようなことは、余計な迷いが出るだけだからしない。実際に取り付いてみると、Ⅲ~Ⅳ-級の僕にとっては決してそう易しくはない滝でも、次に掴むべき岩のでっぱりがズームアップしたかのように視野の中心に大きく飛び込んでくるのだ。だから、ほとんど恐怖感を感じずに、直観に従ってスイスイと登れてしまう。恐らく野生動物、例えば鹿などが急峻な岩場を駆け回っている時はこんな感じなのではないだろうか。
 思えば、この所ずっと、中級以上の沢に単独で入っている。単独の沢登りは、捻挫一つしただけで遭難騒ぎになり、周囲に大迷惑をかけることになる。だから、絶対に怪我をしないという気合で、五感を研ぎ澄まし、その集中した状態を長時間保ち続けなくてはいけない。これを3週連続でしたことが、想像以上の修練となり、第六感が働き始めたのではないだろうか。神秘体験と言っては言い過ぎだろうが、ここまでの感覚の冴えは、20年以上山をやっていて初めての経験だった。
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 上流に行くにつれ、倒木と巨岩はますますその密度を増し、お互いを「ギシギシ」と押し合う世界になってくる。異常なまでの圧力感。
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 自分の行く手を遮るこれらの巨大な存在たちに逆らうことなく、くぐったり、またいだり、飛び跳ねたり、攀じ登ったりと、臨機応変に自分の体を動かしていく。そうは言っても、なかなか足取りは進まず、時間だけがどんどん過ぎていく。
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 18時、標高1430mで突然傾斜が緩やかになり、ナメになる。待望のメンガクボだ。太田五雄さんをして屋久島一と言わしめ、他の人からはそれほどでもない、と言われているメンガクボ。いやあ、あの辛い下流部から登ってきて最後にこの景色を見たら、やはり、屋久島一と言いたくなる気持ちはわかるなあ。
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 18:10、写真の1440m二股の右岸岩盤上にテントを張る。ほぼ12時間行動。焚火をしたかったが、薪を集める気力もなく、ヘッドライトでハヤシライスを食べて、20:45就寝。
 夜中に、寝床の傾斜と寒さで何度も目覚めた。下界は暑かったが、屋久島にも秋は確実に来ている。

 9月2日。曇時々晴。
 朝6:40起床。濡れた服に袖を通すのが嫌だ。
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 7:40出発。二股は水量が少なめの右又を選択し、湯泊歩道を目指す。源頭は多少倒木やシャクナゲの枝がうるさかったが、大した藪漕ぎもなく8:15湯泊歩道に到着。


 黒味川上部は難易度4級。永田川や湯川よりは少し難しい印象。ケヅメは巻いてしまえば、大したことはない。それよりもメンガクボに入ってから延々と続く巨岩+倒木帯を超えていくのに、体力的かつ精神的なスタミナが必要である。屋久島の巨岩帯のルートファインディングに慣れているかどうかでコースタイムは大幅に違うだろう。一泊二日で海から源頭まで行って帰ろうと思うなら、初日にケヅメ終点まで頑張れば良いと思う。もちろん相当の実力がないとこれは厳しいが。ザイル以外には特別な登攀具は必要ない。

Comment

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うお~,とうとうやりましたね,おめでとうございます!
写真を拝見しながら,「あったあった,ここ」と独り言が出ていました。

ケヅメは私も同じようなコース取りでした。トンネル出口の階段状の壁は立っていて難しかったです。でもメンガクボは最高ですよね。遡行人さんの仰るようにあの下にあるアルバイト的な急傾斜と倒木ゴーロ帯があるからこそ,あそこの良さが際立つと思います。

>自分が進むべきルートが、そこだけフォーカスが合ったように浮かび上がって見えるのだ
あるべきものが,あるべきところに見える。単独行の深い醍醐味の一つですよね。

いや~でも羨ましい限りです,このフィールド感。
インヤン | URL | 2012/09/04/Tue 10:23 [EDIT]
ケヅメのコース、インヤンさんも同じと聞いて、安心しました。
トンネル出口の階段状の壁は、しょっぱいですよねえ。
そして、上流部、倒木ゴーロ帯のあの消耗具合。
全て行ったことのある人だけが激しく共感し合える、超マイナーな世界の話ですが・・・。
コメント嬉しかったです。
屋久島遡行人 | URL | 2012/09/04/Tue 12:15 [EDIT]

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