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小楊子川右俣中部~花之江河沢・屋久島沢登り記録
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 今、加藤文太郎の『単独行』を読んでいる。新田次郎の『孤高の人』のモデルとなった昭和初期の登山家の、遺稿集である。これを読むと、実際の加藤文太郎は、『孤高の人』に描かれた超越的な人間とは大分印象が異なり、人間臭くて、山でも結構道に迷ったり、失敗を繰り返しながら成長していることが分かる。もちろん、その体力は超人的で僕なんぞとは比較にならないのだが、それでも、読む前よりも彼に親近感を感じてしまった。
 
 10月4~5日に小楊子川右俣(中部)から花之江河沢に行ってきた。単独行。
 右俣はまだ下部しか行ったことが無いので、本来はまずきちんと本流を源頭まで詰めるべきなのだろう。が、花之江河沢は、太田五雄さんの記録で「淀川や大川上部以上の美しさ」と書かれており、インヤンさんもブログで絶賛しているので、上部は右俣の枝沢である花之江河沢に入ることにした。

 10月4日。晴時々曇。
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 8時、林道終点発。その先の元林道は廃道となり、大自然に帰りつつある。そこを歩いて、栗生歩道に達し、8:45、大洞杉着(1枚目)。そこから枝沢を下り、小楊子川右俣の下流部に入渓(2枚目)。河原で朝飯を食べて、9:20出発。
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 2年前の5月に行った右俣下部はいきなり高巻きで苦労させられたが、中部はそんなことはない。巨岩のサイズも大したことなく、岩盤上をスタスタ歩ける場所も多いので、ハイペースで進める。一カ所2mの滝が右岸にかかる場所があり、左岸をへつりで越えようとしたが、最後の1、2歩が下から予想した以上に難しかった。しかし、目の前に2枚目のようハーケン(君は見つけられるかな?)が出現。人里離れた深山幽谷の中でこういうのを見つけると、先人も同じ所で苦労して、同じように突破したんだなと思って、嬉しくなってしまう。錆びてはいたがしっかりしていたので、これ幸いと素手で掴んで超えた。(決して穴に指を突っ込んではいけない。万一落ちたら指がちぎれるから。)Ⅲ級のムーブ。
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 その後は再びハイペースの登りで、11時に右から枝沢(1枚目)が出合った。水量は3:1。高度計は1185mを指している。花之江河沢との分岐だろうか?しかし、地図では分岐は1215mのはずだし(太田さんの記録では1240mとなっている)、水量があまりに少ないし、早く着き過ぎな気もして、確信が持てない。そこで、もう少し本流を詰めてみることとする。結局1280mまで上がってみたが、新たにそれらしい分岐は現れず。やはり、さっきの枝沢が花之江河沢だったのだろう。登って来た沢を引き返して、先ほどの出合部分の本流を良く見ると、太田さんの記録に「分岐部には8m直瀑」と記載されている滝が確かにあったので、これが花之江河沢と確信できた(2枚目)。1時間半もタイムロス。
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 食事をとって、12:50、花之江河沢を遡行開始。
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 花之江河沢は小楊子川右俣に比べて、石のスケールが大きくなり、斜度もきつくなるので、そこそこ登りにくい。1枚目の滝(10m)は左岸から小チョックストーンを目指せるかと思ったが、やはり岩が猛烈に滑って無理。ならばと、右岸の巨岩向かって左側のブッシュ奥をチムニー登りで登り、水流の方にトラバースすると、小チョックストーンの上部に出た(2枚目)。後は、岩の隙間に足を突っ込みながら完登。
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 続いて現れたナメの大滝。30mはあるか。途中までは左岸巻き(1枚目は巻きの途中から)、最後の方は水流の中を慎重に登る(2枚目)。実に爽快な滝。
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 その後も小さなナメ滝や河原歩きで標高を稼いでいく。
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 15:40、標高1600mに最後のナメ滝を越えると、世界は一挙に変わる。
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 「明鏡止水」
 言葉を失う風景。いや、正確には興奮のあまり「ヒャッホー!・・・ヒャッホー!・・・」と絶叫しながら歩いていた。
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 ちなみに、右の岩、高さ約10m。比較のために左下に僕の60Lザック。
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 こんな穏やかな源頭部なのに、なぜか笑える程の巨岩が所々転がっている。
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 2~3か所、あまりの巨岩の密集ぶりに、下の隙間を匍匐前進でないと通過できず。2枚目は黒味岳。
 それにしても、この沢の延々と続く美しさは、大川上部の七ツ渡しは軽く超え、さらにビャクシン沢以上、淀川にも比肩しうる物だ。今回、一眼デジカメを持って来なかったのが残念。安物防水カメラではあの美しさが10分の1も描写出来ていない。
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 16:20、1640m地点で、右からかすかな枝沢(1枚目)が入り込んでいるのを発見。周囲の地形から判断して、これがどうやら花之江河に直接上がる沢のようなので、突入。が、が、が・・・。
 超激烈な藪。密度もこれまで経験した最高レベルに近いのに加えて、樹種がほとんどイバラ系と来ている。地獄の鉄条網デスマッチ。目的地の花之江河まではわずか100m位のはずなのだから、無理矢理にでも突破したいのだが、全く身動きが取れない。3m進んだ所で、あまりの辛さに退却を決断。往復6mの移動に15分かかった。時速24mの新記録。
 いくらなんでもこの枝沢を行けるとは思えない。恐らく僕のルートファインディングの間違いだろう。
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 本流に戻ってみると(1枚目)、こちらは人間的なレベル。水が枯れ始める辺りで、沢筋を離れ適当に右へ進路を変えて藪を漕ぎ始める。5分ほどそこそこの密度の藪を漕いだら、17:10、木道(花之江河から320m北に進んだ地点だった)に飛び出した。
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 17:20、花之江河に着。この時間、他に登山者はだれもおらず、一人静寂の湿原を楽しむ。
 と、そこに、知り合いのガイドSさんが一人で現れる。僕が、花之江河沢を上がって来たが最後上手く詰められなかった話をしたら、「花之江河に直接上がらなくて正解でしたね。そっちのルートを採った人たちは、すさまじい藪漕ぎで雨具がボロボロに破け、皆最後は癇癪を起しながら花之江河に出てきますよ」と言われた。とすると、僕が諦めたあの枝沢はやはり正解ルートだったのか。あれを突っ込む人がいるとは・・・(絶句)。
 花之江河の木道上にテントを張り、シチューを食べて20:40就寝。
 夜は放射冷却で、霜が降りるんじゃないかと言う位冷え込んだ。

 10月5日。晴。
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 5:40起床。
 朝もやの中、刻一刻と表情を変えていく高層湿原。
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 6:15、神社に道中の安全を祈願して出発。栗生歩道を下る。ここはほとんど登山者が歩かないから、整備もされず、荒れ放題に荒れている。ピンクテープも少なめで、山に慣れた人でも夕方以後に入り込んだら、確実に遭難するだろう。難易度2級?
 9:00、上の登山口着。9:30林道終点着。
 林道終点からゲートまでは片道約1.5時間の歩き。

 
 小楊子川右俣中部は難易度2級。一ヶ所前述の滝のへつりが核心と言えば核心なだけで、あとはほとんど何の変哲のない河原歩き。特別な見どころもない。標高1280mより上部は未踏だが、3年前に行った下部(大洞杉より下)は難易度4級だったので、全体の難易度は4級になるのではないか。
 花之江河沢は難易度3級。急峻なナメ滝の巻きなどで一部注意を要するが、特別な登攀具は不要。源頭部では、藪漕ぎを最低限に済ませられるよう、ルートファインディングは慎重に。僕はこれまで、屋久島内の沢の本流は8割以上登ったが、その中で1,2を争う美渓であることは間違いない。アプローチが長くて面倒だが、それでもお勧め。


Comment

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とうとうあの秘境に達したのですね・・・源流のナメ帯には言葉はいりませんよね。あの素晴らしさは言葉やコマ切りの写真では,とうてい表現しきれないと思います。

また,最後の詰めは,地形が平坦で周囲の雰囲気から判断するしかないので,花之江河のドンピシャで出るには苦労しました。あのイバラには突っ込めませんよ(笑)。

またの報告,楽しみにしています!
インヤン | URL | 2012/10/10/Wed 17:13 [EDIT]
あそこは、ナメの見事さのみならず、アプローチの困難さ(上からも下からも行きにくい)からしても、まさに屋久島の秘境という言葉がピッタリですね。

インヤンさんのブログを通して、良い沢を教えてもらったことに感謝です。
屋久島遡行人 | URL | 2012/10/10/Wed 18:53 [EDIT]

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