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『サブリミナル・マインド』・読書日記
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 副題が「潜在的人間観のゆくえ」。
 著者が東大助教授時代、人間行動学の講座で講義していた内容をまとめ直したもの。当時文化人類学の学生だった僕は、実は著者の講義を受けたことがある。内容にかなり期待して教室に入ったのだが、話がチンプンカンプン過ぎて、確か2回で脱落。周囲の学生も同じだったようで、最初10人近かった受講生が、2回目には3~4人に減っていた記憶がある。その時は生意気にも、「せっかく面白そうな内容なのに、先生の講義の仕方が下手だからわからない」と思っていた。
 が、あれから20年以上経った今この本を読んで、考えを改めざるを得なかった。実際は、下條氏が提示する数々の実験結果があまりにこれまでの固定観念とかけ離れているために、当時の自分が能力不足で理解できなかっただけなのだ。(今もどこまで理解できたか自信がないが。)
 
 AKB48の総選挙で誰に投票するかから、明日無差別大量殺人を実行するかまで。我々の人生で行われる選択は全て、自らの自由意思に従って決定されると考えられている。だから、その行動結果に対して(精神病の患者以外は、仮に「教祖」の洗脳下にあっても)、各個人が責任を負うのも当然ということになる。

 そんな人間観は昔からあったのだろうが、恐らくデカルト以後、より強固に凝り固まってしまったのだろう。 
 「我思う、故に我あり。」思考している主体こそが、自分の中心。
 そんな近代の人間観に、フロイトの無意識論を付け加えて、これまでの僕の中では、「自分」と言うものをこんなイメージで捕えていた。
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 意識している部分の「自分」は、人生をうまく筋道立てて乗り越えていくべく、論理的思考を推し進める。
 しかし、海面の下に沈む氷山の如く、その下には実はもっと大きな無意識の「自分」がある。本能的欲求、リビドー。
 意識している思考と無意識の欲求は、大概対立する。意識の「自分」が理性的に生きようとあまりに頑張りすぎると、時々、抑えつけられていた無意識の「自分」が叛旗をひるがえし、爆発的・衝動的な行動に出てしまう。そうならないためには、内面奥底に潜む無意識の「自分」の声にも時々耳を傾け、適宜軌道修正していかなくてはならない。

 以上、我ながらものすごーく単純・陳腐な理解で、公開するのも恥ずかしい。

 ところが、この本を読んだ後では、こんなイメージになってしまう。
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 実は、「自分」は、思考している主体(頭で操縦桿を握っている小人)とは全く別の主体(頭の中に隠れていたり、全身に散らばっている黒子のような小人たち)によってあちこち自律的に制御されている。しかし、思考している主体はそのこと(配線が切れている!)に全く気付かないまま、あくまでも「自分」を完全に制御していると思い込み、疑うことすらできない。
 では、どうすれば配線をつなぎ直して、思考している主体が「自分」をちゃんとコントロールできるようになるのだろうか?
 いや、どうやら「自分」とはコントロール不能な怪物のようだ。頭の中の一人の小人では、もうどうしようもないらしい。そう思うと、意志の力で自分の人生をコントロールできると信じてこれまで生きてきた「自我男(じがお)」の僕は、途方もない無力感に襲われる。

 それにしてもこの本は、僕にとってパラダイムシフトを迫る、難解な本であったのは間違いない。それゆえ、今回は書評としてうまくまとめられなかった。気になった人は、アマゾンの書評も読んで欲しい。もっと適切な紹介文がたくさん並んでいる。ちなみに、この難解な本に、本日時点で23人もの読書家が優れた書評を書いているのを見ると、日本人の知性も捨てたものじゃないと思う。

 類書にインド系アメリカ人脳科学者の書いた『脳のなかの幽霊』があり、これもおすすめ。大部の本で読破するのに時間がかかるが、『サブリミナル・マインド』同様、驚愕的な症例報告が多数挙げられていて、自己、人間というものへの信頼が崩れ去る。
 アプローチの仕方は全く違うが、人間の世界認識の限界を知らしめるという点では、『理性の限界』『知性の限界』『感性の限界』三部作も同じような目的を果たしていると言えよう。こちらは、講談社現代新書の最近のベストセラーだけあって、読みやすい。

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| | 2013/02/01/Fri 22:44 [EDIT]

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