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2013年読書総括・その1
 昨年は、146冊の本を読んだ。丁度2.5日に1冊の本を読んだ計算になる。読書家の中には毎日1冊以上読む強者もいるようだが、これは僕の中では自己記録更新で、結構嬉しい。
 読めば読むほど、読書スピードが速くなっていくのは、筋トレと一緒だ。そして、多少つまらないなと思っても無理矢理最後まで読み切ってしまえる体力もついた。もっとも、amazonや各種書評を参考に本を選ぶようになってからは、大きく外した本を買うことはないので、買った本はほぼ100%読んでいる。それに加え、20年以上前に買ったまま積読になっていた古典も20冊近く読めた。『ソクラテスの弁明』『若きウェルテルの悩み』『チベット旅行記』『沈黙の春』『死ぬ瞬間』など。「今頃読んだの?」と言われると恥ずかしいが・・・。
 146冊の中から何冊か、ブログに更新はしなかったが印象に残っているものを選び、2回にわたって紹介。今日は小説、ノンフィクション分野から。
  
①『七帝柔道記』
 北大柔道部出身の著者による、半自伝的青春小説。
 七帝柔道とは、旧七帝大系柔道部で行われる特殊な柔道。投げ技重視の今の柔道(講道館スタイル)とは違い、寝技・関節技重視の柔道で、総合格闘技で一世を風靡したグレーシー柔術に近いものだ。同著者の『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』を読んだ時にも思ったが、多人数相手でなく一対一で戦う格闘技としては、空手やキックのような打撃系ではなくこういう組み技系の方が強いんだろうな。でもやはり、僕自身は今でも、一撃でKOしうる打撃系に惹かれる。
 実は著者と僕は、大学入学が同じ年である。あの当時、「世界チャンピオン」とか「日本一」とかでなく、現実的目標として「東大最強の男」を目指した僕は、柔道部ではなく極真空手を選んだ。が、道場の隣のスペースでは東大柔道部の友人も激しい稽古していて、彼の名前がこの本にも登場する。その後さらに、僕はこの本の舞台となる北大で6年間過ごし、本作中に出てくる寿司屋にも行ったものだ。そんな訳で、この本で描かれる時空間は、僕にとってまさに「青春プレイバック」だった。

②『人間の絆』
 南太平洋を舞台にしたモームの短編は以前から好きだったが、これは、ヨーロッパを舞台にした長編。足がビッコなことにコンプレックスを抱く若者フィリップが、様々な友人、先輩、女性と出会いながら人間的に成長していく過程を描く。『次郎物語』、『しろばんば』三部作、『デミアン』などと同じく、「教養小説」というジャンルに入るらしい。
 読む前は、題名から、人と人との繋がり・連帯の素晴らしさを訴えるような作品を想像していたが、これが大外れ。原題は「Of Human Bondage」。「人間の束縛」と訳した方が、はるかに内容に即しているのにと思う。人間を束縛するもののうち、最大のものはほかならぬ人間(関係)。とにかく、フィリップを取り巻く人間たちのアクが強い。その人物描写が何ともリアルで、「こういう人間、いるいる」と思わず肯きながら、抱腹絶倒。何とも悲惨、でも滑稽なのが、自分の才能の無さが全く分からないでいたミス・ブライス。そして、圧巻はやはり、世界文学史上稀代の悪女ミルドレッド。彼女に惚れてしまったフィリップの、振り回されっぷりがもう想像を絶している。俺はここまで阿呆にならないぞと妙な自信が湧くほど。
 岩波文庫で読んだが、訳文が非常に読みやすくて良かった。全三巻の長編古典文学なのに、面白くて一気に読める。

③『クロイツェル・ソナタ/悪魔』
 男の嫉妬心の激烈さ(「クロイツェル・ソナタ」)、そして人間の心に巣食う愛欲の根深さ(「悪魔」)。扱っているテーマは、ぶっちゃけ、林真理子と同じようなものだ。しかしこれが、大文豪トルストイの作品なのだ。もちろん、描写力は圧倒的にトルストイが勝る。どうしようもない人間の本性を、これ以上鋭く抉り出している作品を、僕は知らない。
 トルストイというと、キリスト教社会主義者、非暴力平和主義者といった、高潔な聖人のイメージがある。だが、彼の著作を読めば読むほど、彼自身が抑えがたい性欲とどう折り合いをつけるかということにも、晩年まで苦しみ続けたのだろうなと思わずにはいられない。
 人間や社会の理想を追求したトルストイに対して、家庭の世俗的幸福を欲しがった彼の妻(世界三大悪妻と呼ばれる)。二人はずっと不仲だった。82歳でその妻と喧嘩をして家を飛び出し、鉄道車内で肺炎になり、そのまま田舎の駅で野垂れ死んでしまう。そんな彼のエピソードを知り、最期まですごく自分に正直な人生を走り続けたんだな、とますます好きになってしまった。

④『アフリカの日々』
 20世紀初頭、デンマークの女性が、アフリカに移住し単身コーヒー農園を経営した時の経験を小説化したもの。ロバート・レッドフォードが格好良かった映画「愛と哀しみの果て」の原作だが、男女関係の描写に重点が置かれていた映画とはだいぶ雰囲気が違う。と言っても、女性が一人で、慣れない熱帯地方でいろんなトラブルに巻き込まれながらも頑張りました風の苦労談でもない。ストーリー上、特に大きな山場というものもなく、アフリカの自然風景や現地の人々の風俗・習慣が淡々と描かれていくだけだ。しかし、読み進めるうちに、アフリカの高原の清涼な空気の中に、読み手の心もトリップしてしまう。いつか本当にアフリカの大地を踏んでみたい、そう強く思わせる一冊。
 併載の「やし酒飲み」も、異次元空間に連れて行ってくれるアフリカのフォークロアとして、おすすめ。

⑤『マルチエイジ・レボリューション』
 最近身近に、これは間違いなく二重人格症だろうという人が出現し、その人の相手で、日々之当惑している。
 で、関連書籍を読み漁っているのだが、その中で最もヒットしたのがこれ。多重(七重)人格の若い編集者と知り合い、いろいろ関わった挙句、最後にはその女性を主演に1本AV作品を撮って、それがきっかけでまた彼女も成長していく、みたいなノンフィクション本。そんな滅茶苦茶なことを実践しているのはやっぱり、チャネリングセックスなど怪しいAV作品を連発し、一部で高く評価されている代々木忠監督。 
 監督たちが、長期間彼女をフォローしていくんだけど、途中から、本来の女性(元々の人格)が全く姿を現さなくなってしまい、物凄い混乱状況に陥る。「ここまでひどくなったら、普通、精神科に連れて行くでしょう!?」って思うんだけど、監督たち周囲の(医学的には)素人が、ひたすら親身に相手し続けるんだよね。別に、当初からAVに出演させるつもりだった訳ではなく。その時の彼らの姿勢が、分析とか還元といった方向でなく、ただそのまま受容している。余計な人格を無理矢理切り捨てて一つに統合させるのではなく、平和裏に共生させていこうというような感じで。なんか、非常に東洋的なのよね。
 まあ、一般の人には「トンデモ本」にされちゃうかもしれないけど、最近の僕自身の体験から言っても、この本は結構本質突いてると思った。

⑥『ワイルド・スワン』
 日中戦争の時代から文化大革命前後まで、日本軍、国共内戦、中国共産党(毛沢東)と、時代の変化に振り回され続けた、著者一家三代の自伝的歴史書。これを読むと、毛沢東が、ヒットラー、スターリンと並ぶ、20世紀の三大悪魔だったことがよくわかる。しかし、著者らを襲い続ける中国民衆の集団ヒステリー状態と化した姿には、問題は毛沢東個人だけではなく、中国人の民族性にもあるように感じてしまった。今でも、伐採しつくした禿山をペンキであっという間に「緑化」してしまったり、反日デモで「愛国無罪」と叫びながら同じ中国人の乗る日本車を破壊したり・・・。中国人のやることはちょっと僕らの理解を超えた部分があるから。
 もっとも、民族の集団的狂気という点では、戦時中の歴史を振り返れば、日本人もあまり偉そうなことは言えないかもしれない。そして、今の安倍政権が特定秘密保護法なんかで目指しているものが、「いつか来た道」であるような気がするのは僕だけだろうか。
 

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