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小楊子川本流上部・屋久島沢登り記録
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 5月3日から5日にかけて、インヤンさんと小楊子川本流~左俣に行ってきた。
 本流上部は3回目だが、左俣は北大時代に山の会の最後の夏合宿で行って以来、21年ぶりの再訪。あの時は、雨にも降られて5泊6日間、すごく充実感のある山行だった。が、渓相の美しさ以上にハードな巨岩の記憶が強烈で、終わった後に、ここに来るのは一度でいいなと思った。でも20年もすると、あの辛さも忘却の彼方で、懐かしい景色にまた会いたくなったのだ。 

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 今年のゴールデンウイークは前半に強い雨が降り続いた。1日午後にようやく雨が止み、2日に出発してみたが、本流下部はこんな感じの大増水。もともと水量の多い川なだけに、渡渉で流されるリスクが高い。一応車で林道を詰めてみたが、1kmほど手前で道が荒れ果てて、通行不能。気分が乗らない。今日は無理せず、1日延期することに。しかし、引き返そうとした途端、車がスタック。1時間近く格闘して、やっと脱出。何だか冴えない一日だった。

 翌3日。今日も晴れ。
 昨日の本流下部は、少しだけ(10cm位)減水しており、これならなんとか行けそう。
 7:40、昨日スタックした所から、林道を歩き始める。終点300mほど手前で、更に道が荒れ果ててほとんど藪の中に消失している。藪漕ぎも面倒くさいので、さっさと斜面を降りる。
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 8:20、入渓。水量は多く、泡立っているが、何とか渡渉できる。
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30分ほど歩くと、右写真の、杉の生えた中洲出現。これは、前回ここを下った時によく覚えている。林道終点が間近という目印の木。
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 そこから20分ほどで、いよいよゴルジュ帯に突入。昨年の宮之浦川と同じ位のスケールだと思うが、両岸の傾斜が多少緩やかな分、威圧感はそこまででもない。しかし、ゴルジュ内部は増水の影響もあり、吸い込まれるような水量。
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 一見簡単そうな地形に見えても、ちょっと中は行けない場所が続く。なので、本流上部は全行程の3割ほどは高巻かざるを得ないのだが、そのほとんどは左岸巻き。巻き自体は樹林帯の中をトラバースで進む所が多く、そんなに難しくない。
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 今日に限って言えば、この水量の中を突破する方が、はるかに面倒だ。そして、やはり岩も大きいし、泳ぎもある。
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 11:55、標高510mで右岸に出合う枝沢は、印象的な3段の滝。右写真右下に写っているインヤンさんを見れば、この沢のスケール感が伝わるだろうか。
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 こけしスラブが見えてきた。途中の桃太郎岩は気付かずに通り過ぎてしまった。13:10、こけしスラブ着。大きさ70mのこけしに見えませんか?
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 で、ここを突破するには、こけしの足元に転がる高さ8mほどの真っ二つに割れた巨岩を攀じ登らないといけない。
 21年前に登った時は左側の岩に打ってあったボルトを使いながら何とか登った。9年前に下った時は、真ん中の割れ目を懸垂下降で下った。
 今回は、真ん中の割れ目を登ってみることに。
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 巨岩に近づくためのこのルートも、昨日の水量では無理だったろう。出発を1日遅らせて良かった。
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 で、巨岩の割れ目をチムニー登りで行くのだが、出だしが足場が無くて難しい。そこで、キャメロットX4の出番。割れ目に挟まったチョックストーンの所にばっちり決まる。数年前に購入以来一度も使う機会のなかったX4を、初めて実戦投入できてすごく嬉しい!これにアブミを付ければ、楽勝で登れる。このセットがないと、Ⅳ級の岩登りだろう。
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 一つ目の隙間(左写真)を越えて、その上にもう一つ隙間(右写真)。上の隙間も、X4とアブミで楽々突破。どちらもザックを背負ったままでは通過不能な狭さなので、ザックは吊り上げで。ザック吊り上げのために、2ピッチに分けはしたが、特に詰まることもなく短時間で登り終える。小楊子川最大の核心を、登攀具のお陰とは言え、あまりにあっさりと突破でき、少し拍子抜け。
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 こけしの頭を見上げてみる。下流を振り返ると、21年前に5人で2泊目のテントを張った懐かしの大岩(中央少し左)が見える。
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 さあ、後はテン場予定の中俣出合までさっさと行こうと、すぐ上のこの岩を登り切った先で、なんと行き詰まってしまった。、
こけしの後IMGP6437 (1)
 これまでならたいして迷わずに突っ込んでいたはずの場所なのだが、今日は増水しており、もし流されたらそのまま滝下まで一気に落とされる。(あまりにテンパっていて、現場の写真は一枚も撮れていない!なので、インヤンさんからもらったのが左写真。左下から泳いできて、真ん中少し下に写っている高さ3mの岩に這い上がりたいのだが、足を滑らせて右下への流れに吸い込まれると助からない。)インヤンさんと確保方法をいろいろ検討したが、どうやっても事故の可能性をゼロにできない。というか、1割くらいある感じ。こけしスラブを高巻く労力を思うと突破をあきらめきれず、10分以上二人で悩んだが、結局引き返すことに決断。ここは過去2回、難所だった記憶がなかったのだが、家に帰ってから前回下った時の写真(右)を見返すと、今回よりも水量がはるかに少なかったのに、空身になってしっかりロープで確保しながら泳いでいた。やはり、今回引き返した決断は正解だったのだろう。
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 さっき登ったばかりの割れ目を、懸垂下降で下る。何やってんだか・・・。
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 こけしスラブは右岸巻き。もう面倒くさくなって、なるべくショートカットで行こうと、下流に戻ってすぐの場所をガシガシ登り始める。斜度50~60度くらいの斜面を、木を掴んでひたすらモンキークライム(左写真)。8割がた登ったところで、高さ4mほどの垂直の壁に行く手を阻まれる。やむなく、更に下流方向に草付きの急斜面を15mほどトラバースしたのだが、落ちたら一気に50mは行きそうな場所。ロープ確保もなく、ここが今回の山行で一番怖かった。最初のルーファイでミスったかもしれない。その後はすぐに、こけしの頭の上のコル(右写真)に出た。
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 下りはほとんど苦労することなく(アップザイレンせずに)、17:25、沢に復帰(左)。結局巻きの所要時間は登り1時間半、下り30分で合計2時間。疲れたあ。
 ゴルジュ内はもう日差しが入り込まなくなり、でも沢の規模は相変わらず大きく、人間は小さく・・・。テン場目標を、中俣出合から手前の右俣出合に変更するが、それでも日没までに辿り着けるか、少し焦り始める。
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 F11手前の左岸のスラブ。ここは、絶妙な場所にリングボルトが1本打ってあり、核心部はそれを頼りに突破できるのだが・・・。そのボルトにたどり着くまですらが、インヤンさんの肩車+アクアステルスの摩擦力でギリギリの厳しさ。21年前に来た時は全員秀岳荘のフェルト地下足袋だったのに、良く突破できたなあと感心。きっとチームワークが素晴らしかったのだろう。
 いくら進んでも、ちっとも沢の規模が小さくならない。
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 もうこれ以上、水につかりたくないんですけどお。
 19:00、待望の右俣出合着(右写真)。日没ギリギリ。中洲や右俣を捜したが、適当なテン場がなく、最後はヘッドランプを頼りに左俣を進むと、幸いなことに、50mほど先の左岸にテント一張り分の平らな大岩発見。19:20、ようやく行動終了。本日の行動時間12時間弱。
 あまりの疲労ぶりに焚き火を起こす気力もなく、泡盛を飲んで早々に寝る。

 小楊子川本流上部は、難易度5級。核心はこけしスラブとされているが、ここは実は、カム1セットとアブミ2個あれば、(一応ザイルは出したものの)楽勝で登れる。今回キャメロットのC4とX4を計8個持って行ったが、こけしスラブ以外の場所でも確保したり、アブミをかけたりで、全てのサイズを使い切った。少し重くなるが、この沢に関しては登攀具を持参する価値は大きいと思う。こけしスラブよりも問題なのはその前後の渡渉。増水していれば、右岸を高巻く以外ない。巻きはロープを出すほどの困難さはないが、それなりのルーファイ能力と体力が要求される。こけしスラブ以外の場所の巻きは左岸中心で、高さもさほどでない。沢の中全体を通して、アクアステルスや肩車でギリギリ越えられるようなスラブや巨岩がゴロゴロしているので、フェルト靴の単独行だと、巻きまくりか、極端に難易度が高くなると思う。この辺は、安房川中部や鯛之川中部に似たものがあり、宮之浦川上部以上に、苦労させられる。
 総括すると、屋久島屈指の巨大なゴルジュの中で、美しさよりもスケールの凄さを体感する沢。日本百名谷に選ばれているのもだてではなく、一度は行く価値あり。



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待ってました!一字一句,思い出しながらニヤニヤして読ませてもらいました。

しかし,右俣出合から下はほんと水量多かったですよね~。天気といい,水量といい,今回はジャストタイミングの遡行でした。遡行人さんといけば,昨年の宮之浦のように,山の神様がそこだけ天気を良くしてくれるような気がしています。まだ2回ですのでもう1回同じようなことがあれば,間違いないと確信できるのですが。

2日目の記録も楽しみにしています。よろしくお願いします。
インヤン | URL | 2019/06/02/Sun 09:01 [EDIT]
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| | 2019/06/02/Sun 16:46 [EDIT]
お待たせせしました。インヤンさん。
安房川、まだあきらめてないのですね!
実は昨日ランニングに出かけたら、右鼠径部の痛みが再発して家から10メートルで引き返してきました。まだ去年ほどの激痛ではないですが、東京マラソンも難しいかもしれません。なので、安房川はちょっと・・・。
インヤンさんなら一人でもきっと行けますよ。
屋久島遡行人 | URL | 2019/06/02/Sun 17:13 [EDIT]

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