
昨夜のテン場はこの岩。ほぼ水平な岩で、快適な寝床であった。
今朝も昨日に引き続き、晴れ。鳥のさえずりと川のせせらぎで、爽快な朝と言いたいところだが、実はかなり頭が痛い。
今回持参の泡盛は、荷物軽量化のためにアルコール度数の高い与那国の花酒「どなん」(60度)を選んだ。それを「三岳」(25度)と同じような感覚で呑んでしまったため、情けなくも二日酔いのようだ。SG顆粒2包飲んでも治まらず、イミグランのお世話になる。

7:40出発。30分ほどで、ゴルジュの入口に到着。直径15mほどの巨大な釜が出迎えてくれる。


寒いけどここは覚悟を決めて泳ぐしかない。


流れに負けたら最初からやり直しなので、コース取りを考えて、結構必死で泳ぐ。


釜のすぐ先に、小楊子川核心の一つ、倒木の滝が出現。見るからに険悪な雰囲気。
左岸のバンドを倒木に向かって進む。倒木は長さ6m、角度50度位。ツルツルではないが、フリクションがそれほど効く感じもしない。アクアステルスよりもフェルトの方がいいと判断し、この場所のためだけに持参した秀岳荘地下足袋に履き替える。岩壁には、小さなリスがいくつも走っているが、結構ボロボロで今一信頼にかける。キャメロットがしっかり効いてくれるだろうか?


前半は岩壁のリスにキャメロットとアブミをセットしながら登り始める。真ん中まで来てアブミにぐっと体重をかけた途端、リスが崩れてキャメロット+アブミが外れ、フォール。幸い、もう一か所のビレイが効いたし、倒木と岩壁の隙間に挟まる感じで落ちたので無傷で済んだ。
気を取り直して再度トライするが、後半はキャメロットをかませるようなリスもなく、更に難しい。上から下がっていた木の枝(右写真)を掴んで無理矢理登り切る。登ってから確認すると、その木の枝は根こそぎ抜けていて、ただ岩の上に転がっているだけの枯れ木であった。危うい所だった。ここは難易度で言ったら、Ⅳ級上?技術的には今回の山行で最大の難所だった。
21年前に来たときは、荷物を背負ったまま、ザイルもアブミも出さずにリードで登り切ったはずなのだが、何でこんなに難しくなっているのだろう。過去の写真を見ると、下にもう一本倒木が重なっていて前半は楽に登れたようだが、後半の難しさは変わらないはずだ。若さゆえの勢いもあるのだろうが、登攀力は、あの頃の方が上だったと認めざるを得ない。ちょっとショックだ。


10:10、標高920mの中俣出合着。中俣はかっこいい滝となって、降り注ぐ。一度行ってみたい沢ではあるが、源頭から先の下山ルートの困難さを考えて二の足を踏んでいる。


中俣を分けて純粋な左俣になると、水量が一気に減り穏やかな小川といった感じになる。水の音も、今までのゴーゴーいう音から、さらさらという音に変わる。ここまで来ればもう安心。が、それでもまだ時折、水に浸かる所もでてくる。


これ以上は望みえない、癒しの景色が続く。


夏場なら中を泳いで攻めたいところだが、今日はやめておこう。


ナメでうっとりする、インヤンさん。

この壁面を、何とか我が家にそのまま持って行きたい!!!


ナメの上で大休憩。
中俣出合から標高1100mくらいまでは、ナメと河原と小滝と渕が代わる代わる出てくる感じで、実に楽しく歩ける。同じ川だから当然と言えば当然だが、小楊子川右俣上部と似た渓相。それにしても、このナメの多さは、屋久島随一だと思う。


14:30、標高1130mの右岸の枝沢は4段の滝。ここを過ぎると、再び巨岩帯に入っていく。と言っても、本流を思えばかわいいものである。
その先で休憩中にヘルメットのあご紐のバックルを水中に落としてしまった。水中カメラで探しながら、何度も潜ってみるが、見つからず。あまりの冷たさに全身震えが来て、あきらめた。


とにかく冷えたので、身体を温めるべく走るように登る。僕としてはほとんど全力のペースで1時間進んだつもりなのに、インヤンさんは、のんびり写真を撮ったり記録を付けたりしながら、余裕で後ろに付いてくる。さすがである。
左写真の釜を越えて10分ほど行った標高1370m地点、左岸の森の中に絶好のテン場を発見。ふかふかの腐葉土の上を今宵のねぐらとする。16:55であった。
焚火で濡れた衣類を乾かして、眠りに就く。明日はいよいよ最後の核心・小楊子大滝、そして下山だ。

Comment

倒木の滝は全行程中,最大の技術的核心でしたね。2本目の倒木が流出したことで難度が上がっていました。以前は2本目の上に乗ればワンポイントのムーブで上へ抜けられましたから・・・。リードありがとうございました。
しかし中俣から上の渓相は素晴らしかったですね。特にコケで覆われた廊下帯などは白眉ものでした。東北などの名渓にも匹敵する景色だと感じました。
中俣遡行に関しては,栗生歩道のミヤコダイラから右俣出合~中俣~尾根~左俣出合(上部ゴルジュの2本手前の左岸枝沢)~永田岳のコルへ抜けるコースを考えていますがいかがですか。右俣出合で1泊,左俣出合で1泊,そして3日目に宮之浦岳経由で下山という感じです。
しかし中俣から上の渓相は素晴らしかったですね。特にコケで覆われた廊下帯などは白眉ものでした。東北などの名渓にも匹敵する景色だと感じました。
中俣遡行に関しては,栗生歩道のミヤコダイラから右俣出合~中俣~尾根~左俣出合(上部ゴルジュの2本手前の左岸枝沢)~永田岳のコルへ抜けるコースを考えていますがいかがですか。右俣出合で1泊,左俣出合で1泊,そして3日目に宮之浦岳経由で下山という感じです。
インヤン | URL | 2019/06/03/Mon 10:36 [EDIT]
倒木の滝は、あの枯れ木が無かったらもっと苦労していたでしょうね。「知らぬが仏」で登り切ってしまえてラッキーでした。
中俣から上は、前回の記憶以上に良かったです。こうやって家で写真を見返していると更にいいです。やはり、景色を堪能できるかどうかは精神的なゆとりのあるなしにかかっていると思わされます。
中俣遡行の件、安房川完全遡行以上に実現可能性が高そうに思えます。来年GWに行きますか?
中俣から上は、前回の記憶以上に良かったです。こうやって家で写真を見返していると更にいいです。やはり、景色を堪能できるかどうかは精神的なゆとりのあるなしにかかっていると思わされます。
中俣遡行の件、安房川完全遡行以上に実現可能性が高そうに思えます。来年GWに行きますか?
屋久島遡行人 | URL | 2019/06/03/Mon 21:35 [EDIT]
>景色を堪能できるかどうかは精神的なゆとりにかかっている
まさにその通りだと思います。今回,小楊子川の美しさを体感することができて有難かったです。
中俣の件,来年の遡行候補ということでよろしくお願いします。
まさにその通りだと思います。今回,小楊子川の美しさを体感することができて有難かったです。
中俣の件,来年の遡行候補ということでよろしくお願いします。
インヤン | URL | 2019/06/03/Mon 22:17 [EDIT]
了解です。
それまでに右足、治さなきゃ。
それまでに右足、治さなきゃ。
屋久島遡行人 | URL | 2019/06/04/Tue 20:09 [EDIT]
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