FC2ブログ
千頭川・屋久島沢登り記録
RIMG0325.jpg 
 8月16日、千頭川の本流に行ってきた。単独、快晴。
 この川の上部は昨年5月の大雨の時に林道上に土砂崩れを起こし、大勢の登山客を下山不能にした所である。崩落した岩や倒木の処理で困難なことが予想されたが、災害現場を見ておくのも一つの経験と思って行くことにした。
 ヤクスギランド駐車場に車をデポして、Sさんのご厚意で安房前岳登山口まで送ってもらう。
 8時、2週間前に登ってきた千頭川左俣を下る。
RIMG0289.jpgRIMG0288.jpg
 前回堰堤かと思ったこの石組は、周囲をよく見るとご覧のように平坦な道の跡が続いており、どうやらトロッコ軌道跡だった。本流に下るまでに3回出てきた。昔の人はすさまじい勢いで、木を伐っては運んでいたのだろうなあと驚嘆する。しかし、それも急速に自然に還ろうとしている。
RIMG0299_202008281506548b1.jpgRIMG0309_20200828150654143.jpg
 8:40、標高405m、千頭川本流に出合う。ここから下部は前回遡行しているので、今回は上部の探索。
 すぐに15mの滝。岩肌が妙に茶色いが、苔苔というわけではない。この辺でなぜかかすかに硫黄臭が。水は冷たいが、近くに鉱泉でも湧いているのか?
RIMG0316.jpgRIMG0318_2020082815065494f.jpg
 河岸段丘のように発達した岩盤状地形が多い。スタスタ歩ければ楽なのだが、左写真のように外傾していて困難なところもある。泳ぎが必要なところもあるが、今日みたいに暑い日はむしろ大歓迎。これは岩の左から突破。
RIMG0321.jpg
 標高500m、沢がクランク状に屈曲する場所の入り口。地形図を見た時から、ここにはきっと何かあると予感していたが、やはり・・・。
RIMG0325.jpgRIMG0331_202008281506552ec.jpg
 今までの岩ゴロゴロの川原歩きから突然の瀞出現。この水の透明度、静寂。印象派の絵画の中に入り込んだよう。まず、今年一番の景色。 
RIMG0337.jpgRIMG0338.jpg
 しかし、瀞はすぐに終わり、その先は、ゴルジュが始まる。強い流れの奥に1mの滝。泳いで何とか滝に取りついて、直登。
RIMG0343.jpgRIMG0348_202008281533401b1.jpg
 滝の落ち口に、左岸からの枝沢が細い直瀑となって入り込む。水の飛沫のきらめき。
RIMG0349.jpg
 絶景に見とれるのも一瞬。行く手に目をやったら、ウワーッ!
 この5m樋状の滝。
 見た瞬間、絶望的な気分にさせられた。結局右岸を簡単に巻けたから良いけど、このサイズでここまでの威圧感は凄い。
RIMG0354.jpgRIMG0356.jpg
 巻き終わって、いったん川床に降りたが、すぐに又直登不能の滝。再度右岸の藪に入る。右写真、落ち口から、二連瀑を振り返る。
RIMG0359.jpgRIMG0361.jpg
 そして、このゴルジュのラスボス登場。ゴツゴツと黒光りした岩肌が、装甲車というか、クロサイというか、実際の高さ(15m)以上の迫力。
 高巻きするのももったいなかったので、左端のクラックから取り付いて、ブッシュの生え際を斜上し、滝を間近から堪能する。
 いやあ、このクランクのゴルジュは予想以上の楽しさだった。
RIMG0371.jpgRIMG0374.jpg
 この先、普通の渓相に戻る。
 お、これはネットで見たことのある風景!
 9:50、標高540mの二股着。水量2:3で右の本流に入る。
RIMG0376.jpgRIMG0381.jpg
 岩のサイズも屋久島基準では小~中岩。
RIMG0385.jpgRIMG0387_20200828155726a88.jpg
 おお、大好きなナメかあ!と思ったが、わずか数十メートルで終わってしまった。残念。
RIMG0393.jpgRIMG0406.jpg
 ところどころ小滝が混じる。
RIMG0415_20200828155730e7d.jpgRIMG0418.jpg
 上流部まで、すっきりした渓相で、懸念していた昨年の土石流の痕跡は、標高750mくらいでようやく出現。でも、右写真の程度ですぐに終わってしまった。ただ、上部はまだ全体的に石が落ち着いておらず、転石が多い印象。今回は沢足袋でなく、アクアステルスの靴で来たのだが、足先を保護する意味でこれは正解だった。
RIMG0422_202008281557340c0.jpgRIMG0423_20200828161548aa6.jpg
 12:05、林道との出合着。水を通す穴が二つ並んでいる。右の方が、堰堤修復工事を大々的にやっていて、沢型が広く、水量も多そうだったので、本流と判断。右に入る。
RIMG0424.jpg
 林道を越えてすぐの堰堤は、今回作られたのではなく、平成7年竣工。去年の土砂災害で壊されはしなかったものの、土石流を食い止める仕事はできなかったということのようだ。堰堤って、結局上流部の窪地が土砂で埋まったらもう役立たずになるということなのだろうか。だとしたら、日本の山奥でどれほど沢山無駄な土木工事が行われていることか。
RIMG0426.jpgRIMG0430.jpg
 林道を過ぎて、すぐに二股。なんで地図にはない明瞭な二股が出てくるのか疑問だったが、コンパスを見て左俣に入る。これ以後、水量が減り、沢登りというよりも岩登りに近い。快適な登りでグングン標高を上げていく。途中、何か所も工事の人がつけたであろうペンキのマークや杭が目に付く。仕事でこんな山奥の危険な場所に来るなんて、ご苦労様だなあと尊敬する。
RIMG0435.jpgRIMG0436.jpg
 標高950m地点で水枯れ。あと1ピッチの登りで1140mのポコに着き、あとは藪の中を下山するだけ。飯を食いながら、念のためにスマホのGPSで現在位置を確認。と、全く想定外の場所に自分がいる。一瞬GPSが不調なのかと思ったが、自分の行動を振り返ると、林道のところで本来三俣に分かれており、中俣に行くつもりだったのを、右俣に入ってしまっていることが分かった。
 林道の手前で、もう一つ、左側に分かれる沢があったのに、それを三俣の左俣と認識できなかった。そして、大々的に工事をやっていて開けた沢だったので、これこそ本流と思い込んでしまった。さらに、途中に出てくる工事関係者の残した人工物が、正しいルートを進んでいるという誤った安心感を持たせてしまった。(以前も船行前岳の下山路で、登山道を外れてブルドーザー道に安易に入り込み危うく遭難しかけたことがあった。)
 まあ、言い訳はいくらでも書けるが、林道についた時点で、コンパス合わせやGPS確認をしなかった僕のチョンボである。
 林道まで戻る気もしなかったので、そのまま詰めのガレ場を上がり、標高1000m位から藪漕ぎ。ここからはもう迷いたくなかったので、左手にコンパス、右手にスマホを持ちながら、ルートファインディング。途中、屋久杉のバンバン伐採された痕がある。最後は沢型を下って、林道着。14時、ヤクスギランド着。
 ああ、最後はスマホGPS様様であった。情けない。


 千頭川本流は難易度2級上。巨岩帯や藪など手こずるところはほとんどなく、健脚の沢屋なら、安房川出合から源頭まで1日で行ける。クランクゴルジュの連瀑帯が、最高の見どころ。スケールはそれほど大きくないが、短い区間にここまで変化に富んだ景色が連続するのは、屋久島内の沢ではかなり珍しいと思う。本流全部を行くのはやや面倒だが、枝沢を行き帰りに使って、この区間だけでも見に行く価値はあると思う。最初の1mの滝を登らずに大高巻きしてしまうと、ゴルジュ内部の絶景を味わえないので、ここは水流に負けず頑張って突破しよう。登攀力があるメンバーならば、特別な登攀具は不要。靴は、アクアステルスを推奨。

RIMG0446.jpg
 今日、足元を守ってくれた靴。ベルギーから直輸入。キャニオニア3の後継者として、まずまずの使用感だった。

Comment

管理人にのみ表示する

いや~素晴らしい渓相です。ゴルジュもその狭さと美しい釜が何とも言えません。見ていて永田のトガヨケ沢を思い出しました。

屋久島の沢のクランク地形はただのクランクではありませんからね。あの膨大な水量の中で浸食に耐えているので,滝場かゴルジュか長トロか・・・何かがありますよね。

また新たな沢の紹介を期待しています。よろしくお願いします。
インヤン | URL | 2020/08/29/Sat 07:37 [EDIT]
千頭川本流、期待以上の秀渓でした。
インヤンさんに教えていただかなければ、存在すら知らなかった沢です。
ありがとうございます。そして、先に一人で行ってしまってすみません。
今度、また一緒に行きましょう。
屋久島遡行人 | URL | 2020/08/29/Sat 18:05 [EDIT]
今年はまだ島に行っていないので,9月以降,必ず行きます。その時はよろしくお願いします。
インヤン | URL | 2020/08/30/Sun 08:53 [EDIT]
楽しみにお待ちしております。
屋久島遡行人 | URL | 2020/08/30/Sun 10:47 [EDIT]

Track Back
TB*URL

Copyright © 源頭の風景を求めて・・・. all rights reserved.
Design by Pixel映画山脈