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永田の地杉との御対面
地杉1
 伝説の宮大工西岡常一さんが、法隆寺や薬師寺再建に当たって必要な材を探し求め、台湾の林で樹齢2000年の檜と出会ったとき、その荘厳な御姿に思わず知らず手を合わせて拝んでいたという話がある。

 上の写真の杉、樹齢120年。胸高周囲290cm、直径90cm強、推定高さ20m強。
 西岡さんの檜には遠く及ばないが、それでも見た瞬間、思わず僕も手を合わせ頭を垂れてしまった。今日まで実に120年間生きてきたこの樹が、切り倒されて我が家の建築材に使われると思うと、光栄を通り過ぎて、恐れ多いのではないかと身震いがした。
 これは、最低でも今後120年は残り、人が暮らし続けていく家を建てないと、きっと天罰が当たる。
 気合が入る。
 僕が理想と考える家造りに当たって、いくつか譲れない点があるが、その一つが屋久島産の杉を使うということだ。その理由は、
 その1.雨の多い屋久島の杉は、自分の身を腐らなくするために樹脂分が多いので、シロアリがつきにくくて丈夫。
 その2.一般に杉は檜と比べて、構造材として強度的にやや劣るとされているが、屋久島のやせた土壌で育った杉は成長が遅い分、目(年輪の幅)が細かく身が詰まっていて強い。これは屋久島内でも特に、花崗岩土壌の永田と栗生の杉に言える。(特に永田には、明治時代日本一の鰹節工場があり、その薪として裏山の雑木林を伐採しては杉を植林するということを古くから始めていたので、植林樹としては島内で最も年代物の杉があるらしい。)
 その3.屋久島内の地場産業の育成に貢献する。現在の屋久島は、第三次産業つまり観光業に従事する人が多数になってしまっているが、本来、第一次産業とその周辺の第二次産業、つまり農林水産業とその加工業(焼酎製造、製材、水産物加工など)がもっともっと頑張っていかないと、と僕は思っている。屋久島の杉材は、今後うまく売り出せば、一つのブランドとして高い付加価値を持たせられるのではないか。そのための一助になるべく、まずは地場産業にお金を落とし、さらに、訪れた人が皆暮らしたくなるような素敵な家を完成させて、屋久島の地杉を使ったモデルハウス的存在にもなればいい。

 そんなことをずっと前から考えていて、大屋根の会の方々にお話を伺っているうちに、大変なことがわかってきた。
 普通木造の家を建てるときは、製材所でプレカットの材木を買うのだろう。が、屋久島の杉を使おうと思ったらそう簡単には行かない。屋久島の杉はただでさえ樹脂が多くて乾燥に時間がかかるのに加えて、島内に人工乾燥機のある製材所やプレカット工場がない。だから、樹の中の水分が少なくなった冬場(切り旬)に樹を切り、その後約3ヶ月は葉っぱをつけたまま林内に放置して乾燥させる(葉枯らし)。その後製材所に下ろしてきて大きめに一次製材し、1~2年自然乾燥。反りや曲がりが出たところで、仕上げの二次製材をしていよいよ家造りに着手。そんなゆっくりした計画でないと、屋久島の杉の良さが本当に生きる家にならないのだ。

 しかしそもそも、現代の日本において、家を建てるに当たって、大黒柱になる立ち木を探すところから始める人なんて、一体何人いるのだろうか?僕が屋久島移住の前に住んでいた諏訪盆地では、6年に1度だけの御柱祭に際し、2~3年前からそれに相応しいモミの巨木を見立てに山に入る。家造りの前にまず大木探しというのは、そんな古来から受け継がれる巨木信仰にもどこか相通じる、ロマン溢れる話だと思う。これこそ最高の贅沢というか、男の究極の道楽じゃあないだろうかと、一人悦にいる。

 そして、3ヶ月ほど前から真剣に永田を中心に島内あちこちの関係者に声をかけて、年代物の大きな杉を探してもらっていた。しかしながら、良い樹はあっても、木材価格の低迷している今日、あえて売ろうという持ち主が見つからず、大木探しは半ば暗礁に乗りかけていた。栗生の国有林から50年物の払い下げの杉が出たということで、それで妥協するしかないかなと思い始めていた矢先・・・
 屋久島の原生林保護のために長年運動してきたSさんから、永田に良い林が見つかって、持ち主も売ってくれそうだと言う話が飛び込んできた。

 以上前置きが非常に長くなったが、本日午後、期待に胸を膨らませて、現地に乗り込んだわけである。
 と言っても、僕一人では材の見立てなどとても出来ないので、Sさんのほかに、島内の杉を扱っている製材所のAさん、永田で古民家を次々に移築しては素敵な民宿にしているIさんにもご同行を願った。
地杉の林1地杉の林2
地杉の林3地杉の林4
 目的の林は、公道のすぐ脇、大きな花崗岩がゴロゴロする急斜面にあった。
 林内のあちこちに踏み跡があるため非常に歩きやすく、長年の間、しっかり人の手が入っていたことがうかがわれる。杉林ではあるが、あちこちに野生のクワズ芋やシダやオオタニワタリも生えていて、周囲からは絶え間なく野鳥や鹿の鳴き声が聞こえてくる。無機的な工場のような単相の人工林ではなく、こんな風に半分野生が残る林で育ってきた樹であることもなんだか気に入った。そして、花崗岩の隙間を見つけて、そこにがっしり根を張っている杉の姿が、文字通り根性がすわった感じがして実に好ましい。

地杉2地檜
 ページトップの杉が一番大きかったが、その他にも左のような胸高周囲2m超の杉が数本、1.5m超だと数十本。この林にある杉だけで、諏訪大社の御柱祭が十分できそうである。Aさんも、「島でこれだけ古い杉が出るのは、恐らく最後だろう。是非切らさせてもらいたい!」と興奮気味に語っていた。これでは僕が興奮するのも当たり前である。
 右は、林内唯一の檜だが、これがまた胸高周囲2.6m!我が家の内風呂はこの檜で作らせていただこうか。

 持ち主のWさんにも御挨拶。快く譲ってくださるとのこと。信じられないくらい幸せ。
 感動、感激の一日。杉探しに尽力して下さった皆さんに感謝。そして、明治以来実に120年間林の手入れをし続けてくれたWさん一族の努力にも感謝。そして、何より、樹木に感謝。貴方達の生きてきた時間を決して無駄にしないよう、大事に使わせて頂きます。末長くよろしくお願いします。

あこう
 おまけ:林内のアコウの木。これは材としては使えないと思う。

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大径木
九尺七寸は、中々の杉やね。先週、九尺二寸の杉を伐りました。今までの最大径で、まま緊張し、また興奮しました。宮沢賢治の言うところの「赤ん坊を寝かしつけるように」伐れました。しかし、難しい。檜風呂が出来たら我ら家族も入れてちょう。
まっちん◯ | URL | 2009/11/30/Mon 22:52 [EDIT]
そうですか!
まっちゃんも経験したことのないほどの大径木なのですね。ますます、切るのがもったいなくなってきました。いっそ、まっちゃんに屋久島に来てもらって切るのをお願いしようかな。
屋久島遡行人 | URL | 2009/12/01/Tue 08:39 [EDIT]

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