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T君からの年賀状
少林寺

 今年も、T君から年賀状が届いた。
 しかし、僕が返事を書いても、今年からもう彼の元には届かない。
 なぜなら、彼は昨年11月に死刑が確定したので、それが執行されるまでの間、面会や手紙の配達を一切受けられなくなったから。(一体この規制に何の意味があるのか!?)
 奇しくも全く同じ日にこの世に生を受けた彼と僕は、大学時代少林寺拳法部の同期であり、関東大会新人戦団体演武で互いに技を掛け合って優勝した仲である。とにかく真面目、ごくたまに剽軽な奴だったが、僕が1年で極真空手同好会に転部したこともあり、その後は自然と疎遠になっていった。風の便りで、彼が極めて優秀な成績で大学院物理学科に進学し、最先端の素粒子理論を専攻したと聞き、さすがTだと思った。
 数年後、駄目サラリーマンをしていた僕の元に突然、「スウェーデンボルグの話をしていた君なら、わかってくれると思う。僕は今、これが本物だと思っている。是非読んでみて欲しい。」という手紙と共に、麻原彰晃の本が4冊送られてきた。ビックリして彼に連絡すると、開口一番「読んでくれたか?」と。「いや、斜め読みだけ。」と正直に言うと、「そうか・・・」と残念そうな返事。その後会話は弾まず、結局それが僕が聞いた最後の彼の声だった。
 以後彼は消息不明になっていたが、1年半後、地下鉄でサリンをばら撒き、多数の人を傷つけ、逮捕された。
 あの時、僕が止めていれば・・・、なんて中途半端に後悔する気持ちは不思議と全く湧かなかった。人生に迷っていたあの青春時代、一歩間違えれば、僕が彼の立場だったかもしれない。結局全ては運命的必然だ、という無力感だけが心の底深くに沈殿していった。

 彼の上申書が、ここにある。

 被害に遭われ、心身ともに後遺症で今も苦しまれている方々のことを思うと、死刑という極刑は当然の決定に違いない。しかし、彼に限ってだけは免除してほしい、というのが僕の偽らざる気持ちだ。
 彼ほどの真面目な天才に、今回の事件を語らせ続けることで、同種の事件の再発を防げるのではないか、という期待が表向きの理由。でも本当は、あんなに良い奴を失いたくない、という僕のわがままな気持ち。


 それにしても、高校文化祭で共に実存主義の研究をし17歳で自らの命を絶ったK.H.君、僕に初めて沢登りの楽しさを教えてくれ25歳でヒマラヤに逝ったO.T.君、小学校同窓会で純愛を語り41歳で結婚詐欺女に殺されたO.Y.君、そして、素粒子理論学者の道からオウムにはまり込み死刑執行待ちのT.T.君。
 この4人の友は、皆揃いも揃って、僕よりずっと純粋に、あっぱれな人生を生きていた。(サリン事件だけは許されないが。)
 どうして俗世の欲望にどっぷり漬かった俺みたいな人間たちが長生きして、純粋な人間ばかりどんどん先に死んでいってしまうのか!!

 悲しい。
 


Comment

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始めまして・・・
その悲しみを・・・未来への希望に変えてくださいね。

それが友情かもしれないと思える、素敵なエントリーでした。
美月 | URL | 2010/01/07/Thu 02:06 [EDIT]
初めまして。
最近悲しい出来事が重なり、落ち込みがちな日々ですが、見ず知らずの方にまで勇気付けられて、ちょっと救われた気になりました。
美月さん、コメント本当にありがとうございました。頑張ってみます。
屋久島遡行人 | URL | 2010/01/07/Thu 08:29 [EDIT]

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